デッキにはそれぞれ個性があり、得手不得手があるのは周知の事実です。
これをもう少し先まで延ばすと、そのデッキの潜在的アドバンテージと言う
物が見えてきます。潜在的アドバンテージとはそのデッキが元から保有する
アドバンテージの事で、例えば高速で手札をダンプするビートダウンデッキ
ならば「相手のハンデスが効き難い。」、パーミッションならば「相手の
対パーマネント用カードが腐りやすい(擬似的なカードアドバンテージを得てる)
などがあります。これらをよく理解し、活用する事が自分のデッキを強くする
ポイントになります。

例えば、九版で帰ってきた《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》が、どうも今ひとつ
使用されていないと言う事実があります。たしかに緑黒ビートダウンなどでは
頻繁に採用されていますが、逆に言うとそれ以外の黒いデッキに入っている事は
あまりありません。「ヒッピーが帰ってきたから嬉々として黒単アリーナドレインに
4枚入れたが、思うように活躍しなかった」と言う経験をした人も多いと思います。
これは惑乱の死霊を入れる事で、相手の化膿や最後の喘ぎが意味を持つカードに
なってしまい、「相手の除去を腐らせる」と言う潜在的アドバンテージを失って
いるからなのです。緑黒ビートダウンのヒッピーが強力なのは、緑黒ビートダウン
と言うデッキに「相手の除去を腐らせる」と言う潜在的アドバンテージが無く、
ヒッピーの採用がデッキとしての潜在的アドバンテージを失わせないからなのです。

潜在的アドバンテージを失う事が大きなデメリットとなるもう一つの例としては、
手札破壊呪文があります。例えば精神腐敗は額面だけ見ればカードアドバンテージを
得ているわけですが、上記のアリーナドレインなどで使用した場合、相手はただ
手札で腐っている除去カードを捨てるだけなので、得した事にはなりません。
むしろ3マナとカード1枚を消費しているのにも関わらず、実質的にはなんら
状況が変化していないと言う事でテンポとカードカウントで損をしている事になります。

逆に、潜在的アドバンテージをよりサポートするようなカードの選択ができれば、
それは非常に大きなアドバンテージになります。よく練りこまれたデッキをコピーしてみると、
自分のデッキと殆ど同じ構成であるのにも関わらず、デッキの動きがまるで違う
といった事がよくあります。潜在的アドバンテージをサポートできているデッキは
動きが滑らかで無駄がありません。よく「噛み合っている」と言う表現が使われますが、
これは潜在的アドバンテージとデッキ全体がシナジーを形成していると言う事なのです。

例を一つ挙げましょう。装備品はミラディンで登場して以来、構築シーンにおいて
非常に強力な存在として知られています。そしてその理由として知られているのは
専ら「カードアドバンテージを失わない事」です。もちろんそれも大きな魅力の
1つですが、それ以上に大きな理由はビートダウンの潜在的アドバンテージと上手く
噛み合っているからなのです。ビートダウンにおいて、クリーチャーはどれもが
等しく脅威であり、単体除去カードだけを使い対処する事は困難です。
これは「ビートダウンデッキは単体除去に対して耐性がある」とも言えます。
そこでコントロール側は全体除去を使う事でテンポとカードカウントの両面で
抵抗しようとするのですが、装備品はその行動を許さないのです。
梅澤の十手や火と氷の剣を装備した灯篭の神1体に神の怒りをプレイすると、
カードカウントではまったく損をしていないのに明らかにアドバンテージロスしている
事が実感できます。これは本来ビートダウンデッキに対してプラス補正がかかるはずの
全体除去カードが、逆にマイナス補正のかかる単体除去に化けてしまったからなのです。

このように、デッキの潜在的アドバンテージを理解すると非常に世界が広がります。
同じカードなのに入るデッキによって神にも紙にも変わる理由を理解する事で、
あなたの構築したデッキの強さは一味も二味も変わってきますよ。

次はサイドボーディングについて考えて見ましょう。サイドボーディングについては
傍観者が記事を書いているので、そちらをご覧下さい。

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